シャキ待ち天国 ~前編~ 【ショートストーリー】 - アナ速 ~FF14ダメ!ゼッタイ!~
2017/05/27

シャキ待ち天国 ~前編~ 【ショートストーリー】

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「ほらあんたも知ってるでしょ?柏木のおばあちゃん亡くなったみたいよ。」

かなりのご年配だったはず。驚きではない。
私もよく知ってはいる。とは言え何度か話した程度で親しくは無かったけれど。

数回話した程度なのによく知っていると言ったのはその柏木のおばあちゃんはちょっとした奇行で有名だったせいである。

柏木のおばあちゃんと言えば毎日夕方になると郵便局前のバス停に現れ
何かを待つようにただじっと暗くなるまで座り続ける、という不可解な日常を過ごしていたおばあちゃんである。
よほど天気が悪いとかで無ければほぼ毎日だったらしい。


最初は旦那さんに先立たれて一気に呆けてしまったのだろうと周りは思っていたようだが
私がバス停で少し話したときも口調や足取りはしっかりしていてとてもボケ老人のそれには見えなかった。

きっとお気に入りの場所なんだろうと思って私はさほど気に留める事は無かったけど。
もしかしたら母が理由を知っているかも、と思い聞いてみる。

「ねえ、お母さん柏木のおばあちゃんなんであのバス亭に毎日通ってたのかな?」

お母さんは少しだけ考える素振りを見せたが理由は知らないらしく

「どうだろうねー。お気に入りの場所だったんじゃない?」

と私との血のつながりを感じさせる返答をする。
ただその後に私よりも25年長く生きている歳の功というやつなのか私が気づかなかった事を付け加える。

「バスの運転手の遠藤さんに聞いてみれば?あの人長いしあんたも学校行く時話すでしょ?」

言われてみれば凄く当たり前の助言ではあった。
毎日のようにバス停に座っていてバスに乗らないのだ。
遠藤さんは絶対に何度か話をして理由を聞いたはずなわけで。

するとお母さんがそうそう、と言いながらゴソゴソとショルダーバッグから出してきてはい、と私に渡す。

「映画の前売り券。誰かと行ってきな。」


何処かで貰ったのだろう。映画のチケットを私に渡してくる。

私は1人の男の顔を思い浮かべていた。
もしかしてこれはチャンスなんじゃないか?とおいしいものを見つけた猫みたいな顔になっていたのかもしれない。

おかあさんがニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべているのに気づく。

「ありがとーもらっとくー」

とできるだけ興味なさそうにチケットをひったくりつつさり気なく部屋に撤退するがきっと無駄な偽装工作だっただろう。


とは言えどうやって誘えばいいのか。

男の子を映画に誘う方法なんて知らない。

「ねえ、前売り券2枚あるんだけど一緒にいかない?」

自然だけどこれだとなんで友達といかないのか不思議がられるかも。

「君の名は。見た?」

今話題の映画だ。これだと自然に誘えはするがもしすでに見ていたら断られるんじゃないかな?

「日曜暇?私とデートしよ!」

言えるわけがない。


いろいろ誘い文句を考えたはみたがいいアイデアが浮かばなかったのでとりあえず保留にした。

明日また考えよう。

そう思いながら私は布団に潜り込んで寝た。
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コメント

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いつも何だかんだでハッピーエンドに落ちるし、今回はタイトルだって陽気なのに、それでも不穏な予感を感じてしまうふしぎ
14ってすごい

毎度ながら素人とは思えないクォリティの文章だね
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