冬の幻 - アナ速 ~FF14ダメ!ゼッタイ!~
2017/08/04

冬の幻

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父は有名な武術家だった。
でも私が12歳の時、海外での遠征中、暴漢に襲われていた女性を助けた際に銃で撃たれて死んでしまった。

大きくて強くて優しかった父があっさり死んでしまったので当時はあまり実感がわかなかった。
私の小さな心が現実を受け入れるのを拒絶したのかもしれない。

お葬式が終わり、火葬が終わっても私は泣かなかった。
魂が抜けたようになっていたお母さんを励ましすらしていたのだ。
「瑠衣ちゃんは偉いね」「お母さんを助けてあげてね」とか親戚に褒められたのを覚えている。

しばらく経って少し落ち着いた頃、私は自宅にある道場で1人で型の練習をしていた。
基本の動きを繰り返し身体がほぐれたころに私はこう言った。

「お父さん組み手してよ!」

いつもどおりの無意識の呼びかけだった。
でも、振り返ってもお父さんがいないので私はとても驚いた。
なんでいないんだろう?なんて馬鹿なことを一瞬考えたりもした。

なんてことは無い。
私は強い少女なんかでは無かったのだ。
むしろ真逆、現実を見ることを拒否した心の弱いただの女の子だった。

どれぐらい時間が経ったのかはわからなかったけど狂ったように泣いている私をおばあちゃんが見つけてこういった。

「頑張ったね瑠衣。」





認めよう。私はどこかでまだ父の姿を追い求めているのだ。
いわゆるファザコンというやつなんだろう。そのせいか18歳にもなるのに一度も男性と付き合ったことはない。

自慢では無いけれど告白された事は10回以上ある。
モデルをやっているなんとかっていうイケメンにも告白された。

でも全く興味がわかなかった。
そもそも頼りない子供と付き合うなんて気が進まないどころか苦痛でしかなかった。

男は強いほうがいい。なんでも出来たほうがいい。生活力がある人はもっといい。
あとは誠実で裏表がなく人間性が完成されていて包容力がある人。

そう、こうやって理想を突き詰めた結果私の恋愛対象がオジサンになったわけでオジサンだから好きなわけではない。
きっと若い男は私には合わないのだ。幸い他の女の子は若いイケメンが好きな子がほとんどだからそっちにいけばいいのに、と思ったりもする。

瑠衣「お先に失礼します!」

しま○らでのバイトを終えて従業員用の出入り口から外に出る。

……ふと周りを見わたすとすっかり街はクリスマス色一色だった。
気のせいか最近カップルがやけに目につく気がする。
クリスマス前に慌てて恋人関係になった人も多いのだろうか。

クリスマスが終わったら終わる関係になんの意味があるのだろう、と思うがそれこそ余計なお世話というやつだろう。

私はと言えば25日は明日香と心美とクリスマスパーティーと言う名の暴飲暴食の予定。
イブはバイト。誰もシフト入らないから仕方ない。

???「瑠衣さんお疲れ様です!」

急に声をかけられて少しだけビクリとするがなんてことはないさっき一緒にあがった北原君だった。
ちなみに私に告白してきた男の子の1人である。
完膚なきまでにきっぱり断ったのが良かったのか特に気まずい関係になったりすることはなく良いバイト仲間であり続けていると思う。


瑠衣「おつかれー!何やってんのこんなところで?」


北原くんは何やら深刻な顔をしているが突然裏返った声でこう宣言する。

北原「瑠衣さん!イブのバイトのあと時間ください!男らしくなったところ見せます!」

え?何?男らしく?

北原「では失礼します!」


北原くんは走り去って行った。

あーわかった!そうそう告白された時拒否した理由聞かれから「男らしくて強い人がいい」って答えたっけ。ってかまだ諦めて無かったんだ。

一度ふられてまた挑戦してくる男の子ははじめてかもしれない。

ってか私の返事聞く前に行っちゃったけど私がヤダって言ったらどうするんだろ。

まぁいいけど、と思いつつスマホの電源を入れて明日香と心美と私のグループメッセージをチェックする。

明日香「勉強辛い。もう諦めて寝てもいいよね?(´・ω・`)」
心美( ・д・)⊃)・O・) ダメー

こんな感じで特に何かある感じではなかった。
私は就職希望なので受験勉強とは無縁だが二人は進学希望なので今がピークだったりする。


瑠衣「バイト終わったー。頑張れよ受験生諸君!」

なんとなく上から目線でメッセージを送ってみる。
しかし北原くんイブの日なにするつもりなんだろ?
すっごいプレゼントでも用意してるのかな?まぁいいか当日になればわかるし。

私は特に気にしないどころかすっかり北原くんの話は忘れてイブの日を迎えていた。






12月24日クリスマス・イブ。
バイトはいつも以上にお客さんが多く忙しかったが終わる時間はいつもどおり。
疲れたので早くうちに帰ってお風呂に入ろう。

従業員用の出口から出て帰宅の途につく。

北原「ちょ!ちょっと待ってください瑠衣さん!」

早足で帰ろうとする私に北原くんが声をかけてくる。
ああ、そういえばこの前なんか付き合えとか言ってたっけ。
私は今思い出したが流石に忘れてた言うのは可哀想なので覚えてたふりをする。

瑠衣「お疲れ!プレゼントくれるの?それともケーキとか?」

北原くんの答えは意外なものだった。

北原「ちょっとそこの公園まで付き合ってくだい!」

指差した先はしまむらの前にある児童公園だった。
小道を隔てているだけで10メートルも離れていない。

瑠衣「いいけどなんで公園?」
北原「来てくれればわかります」

公園にはすぐにつく。すると北原くんはコートを脱いで私に宣言する。


北原「見てください!俺男らしくなりました!」

北原くんが突然演舞のようなものをはじめる。
ホワーとかアチョーとか鳥の鳴き声みたいな奇声もあげてたりする。

突然の事に驚くがこれって確か……

瑠衣「ジークンドー?っていうかブルース・リーの映画見た?」
北原「はい!どうでしょう?」

私も見たことがある。でもなんだろうそれっぽいけどキレとか重みがなくて武術というよりダンスみたいだった。

瑠衣「ひどい。武術バカにしてるの?そもそも腰が入って無さすぎ。ちょっとやってみて」

あまりにも酷いのでついつい指導してしまう。
腕だけ動かすパンチのようなものやチアリーダーのチアダンスと間違えそうなキックも見過ごせなかった。北原くんは戸惑っていたが素直な子なので私の指導に従い動く。



……ついつい指導に熱が入り気がつけば30分は過ぎていたと思う。

あれ?以前にもこんな事なかったかなとデジャブ。
そんなわけないか北原くんを公園で指導なんてしたことない。



そうそう。子供の頃冬の寒い中こんなふうに私も型を教わった。
走り込みについて行ってこの公園で父さんとこんなことした。

「今はお遊戯にしか見えないがお前は筋がいい!鍛錬し続ければいい武術家になるぞ!」

こんな風に父が褒めてくれたのを覚えている。



北原「どうですか?」

北原君が聞いてくる。だから私はこう答えることにする。

瑠衣「今はお遊戯にしか見えないけど鍛錬し続ければいい感じになるかもね。」

北原くんは嬉しそうな顔をするがそのあとで申し訳なさそうに言う。
北原「あの、僕男らしくなれましたか?」



私は答える。

瑠衣「ううん全然!正直論外だと思う!」

でも、と続けて私は言う。


瑠衣「ありがとう。クリスマスプレゼントしてはかなり良かったよ。」

はぁ、となんだかよくわかっていない様子。
なんだかその顔が凄くかわいらしくて心美みたいだった。

私は疲れて座り込んでる北原くんの手をとってこういう。

瑠衣「汗かいてるんだからさっさと家かえって風呂入んな。ほらたって。」


そのまま手をつないだまま北原くんをひっぱって歩いて行く。
昔は逆に父さんにこうやって引っ張られたな。

そんな事を考えながらイブの道を歩いて行く。

少しだけどまた父さんとまた同じ時間を過ごした気がした。


クリスマスが特別な日かって?私はそう思う。
だって父さんとまたこうやって触れられたのだから。




サンタさん今夜は忙しいだろうけど、皆にもこういう奇跡が届けてね。


私は頭のなかでそんなことを考えながら北原くんとイブの夜を歩いていた。
手は繋いでいたけれど絶対に恋人同士には見えなかっただろう。




北原「ちょ、瑠衣さん早い!ちょいペース落として!!」

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コメント

非公開コメント

No title

まじかよ、リクエストしたら早速短編来てたし瑠衣の話だった
行動力ありすぎか、ありがたやー!
めっちゃほっこりした
青春ものいいですわー

No title

私の荒んだ心には眩しすぎるエピソードでした。
他の登場人物もサイドストーリーがあるのなら、ぜひお願いします。
ついつい最後まで読んでしまう、この文章力には敬服します。
まさかFF14 絡みでこんな楽しみが出来るとは思いませんでした。

Re: No title

ありがとうございます。
なんか読み物系はとてもあったかいコメントばかりでバイトを雇ってるみたいですね!
でも雇った覚えが無いのでとても不思議です。

No title

ゴミゲ14のブログなのに爽やかなモンを見させられちまったぜ

No title

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