デパートの屋上 - アナ速 ~FF14ダメ!ゼッタイ!~
2017/05/01

デパートの屋上

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俺が小さい頃、時々親父が隣の大きな街に連れて行ってくれた。
とは言え子供なんてデパートがあるだけで大きい街と感じたもので実際はそうでもない。
せいぜい地方の中心都市と言ったところだ。

父が他界して数年になるがGWを利用して実家に戻って当時を思い出しいてふと気になった事がある。

そのデパートの屋上でディズニーランドのエレクトニカルパレードに命名する時に強く影響を受けたと思われる「エレクトニックアクションパレード」なる安っぽい出し物があったのだ。

開催は週末だけで夜の6時から。

名前は忘れたがたぶんこれもまた何かを多大にリスペクトしたと思われるオリジナルのヒーローと怪人が安っぽいアクションをやたら眩しい光と音で無理やり盛り上げていたわりと最低のショーだったと思う。
台本のタイムラインに合わせて人形のようにぎこちなく動きわざとらしく「やられたー!」とか演技をしていた。

でも私はこれが大好きだった。


そしてふと疑問に思うのだ「なんであんな眩しかったのだろう?」と。
今でもあの鮮烈な赤や黄色、青の光ははっきりと思い出せる。

幸い当時と同じ場所にまだデパートは営業している。
ただ、案内板を見るに屋上遊園地は今では屋上公園へと姿を変えているそうだ。
退屈していた事もあり私はそのデパートへと足を運んだ。

いきなりこんなことを聞いて変人かと思われるかと思ったが受付の若い女性に「昔あった屋上遊園地の事を聞きたい」と訪ねると女性が古株のなんだか偉い人を呼んでくれた。
意外にも迷惑がられるどころかその初老の松田さんと名乗った人はは嬉しそうに当時の事を話してくれた。

聞いてみれば別に特殊な機材を使っていたとかそんなことは無かったようだ。
単にショーの時間だけ下のフロアにあった撮影スタジオからストロボ発光器を借りてそれにフィルムをかぶせていたらしい。ヒーローと怪人はアルバイトだったとか。

格闘技経験ある人、とかそんな条件で募集をかけて集めたただの素人だったらしい。
なるほど安っぽいわけだ。

いろいろとデパート内で野暮用を済ませていたら夕方になってしまったが屋上に足を運ぶ。
屋上庭園……かつての屋上遊園地跡に足を踏み入れる。
まばらだがそれなりにまだ人はいて当時の面影もなんとなくのこっている。

私はかつてステージがあった場所の前の喫煙所に腰を降ろす。
なるほど今は屋上までいかないとタバコ吸えないのか、と苦笑いする。
確か当時は内部にいくつも喫煙所があったような記憶がある。
このへんも時代の変化なのかもしれない。

そういえば確かアレキのあそこ戦隊モノみたいな曲流れて無かったっけ?とふと思いつき
ショルダーバッグからタブレットを取り出しyoutubeで攻略動画を再生してテーブルに置いてみる。

なんとなく雰囲気だけは当時に近くなった。安っぽい戦隊モノのBGMはこんな感じだった。
あと無意味に光ってる感じも近い。光量が圧倒的に足りていないのが残念だが。

お盆は帰れるかわからないし、と盆参りも前倒しするつもりで酒好きが祟ってわりと早死した親父のためにワンカップの日本酒を持ってきた。
蓋を空けて少しだけ飲んでみる。

大人になった今、酒の味は多少わかるがなんというか香りが薄く特においしくはない。
裏のラベルを見ると醸造アルコールを混ぜられた日本酒だと解る。

でもこれが好きだったんだからこれでいいだろう。


一緒に来た母が買い物を終えたのかいつの間にか俺の側に立っている。
一目見て俺が何をしているかわかってくれたみたいだ。

「確かにあの人がお墓でじっとしてるとは思えないね。いるとしたらここかもしれないね。」

と俺の横に腰掛けて笑いながら言う。


流石にタブレットの光じゃ当時のストロボの圧倒的な光量は再現出来ていない。
でもなんだか目を閉じるとあの安っぽいヒーローが今でも目に浮かぶようだ。
そう、あの不必要に明るい光が格好良く見せてくれたんだ。
まるで光の中からヒーローが出てきたみたいで、だから俺は興奮してたんだ。

今思えばあの眩しすぎる光は「見えちゃいけないもの」を隠す意味合いもあったのかもしれない。
これは松田さんに聞くの忘れてたな。でも聞くのはきっと野暮だろう。
別にすべてのものを見る必要はないしすべての事をしる必要は無いのだから。

知らずに楽しめるならそれでいいのだと思う。


……ふと屋上公園を見渡すともう18時過ぎなのに遊んでいる子供がいる。

父親の方はなんだか凄く帰りたそうに急かしている。
子供は屋上から見える街の明かりに大騒ぎしている。
ああ、あのコイン式望遠鏡まだあるのか。10分100円とかだったっけ。

昔はこんなに明るくなかったな、と当時より多少発展した街の夜景を俺も眺める事にする。
100円を入れて見える景色は特に感動もないただの地方都市の夜景だった。

あの時の屋上遊園地はもう無い。
でも実際のところそんなに変わっていないのかもしれない。


いつだって本当に人生が充実してる人間はデパートで休日で過ごすものだ。
だってそうだろう?こんな無意味な時間を過ごすことが出来るって事自体が最高の贅沢なのだから。

屋上を後にする前にふともう一度屋上を見渡してみる。
まださっきの子供と父親は望遠鏡を覗いている。
あの子供が俺ぐらいの歳になる頃にはきっともうこのデパートもなくなっているだろう。

でもきっとそれでもあの子はいつかここの事を思い出すだろう。

子供の頃の美しい思い出の1つとして。
デパートはずっと彼の中で一番であり続けるのだから。



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コメント

非公開コメント

闇が……ない……だと………?

はい。だってこれ主役が闇が濃すぎるあの人なので。

エッセイ風いいゾ~
そういえばデパートの屋上にある白壁の食堂も見なくなっちゃったね
真夏の昼下がりに食べる安っぽいお子様ランチと合成着色料マシマシのメロンソーダの味が懐かしい

少なくともFF14定食よりは美味かったな

爺さん婆さんと一緒にイトーヨーカドーの屋上行って、トランポリンときったねえフナだか鯉だかの釣り堀やるのが子供の頃の最高の楽しみだった。その後そのまま屋上で食う飯も好きだった。
今はイトーヨーカドーの屋上には遊ぶものないし爺さん婆さんもいない。何もかもが懐かしい。あの何も考えなくて良かった頃に戻りたい・・・。








あでももう一度FFの末路見るの嫌なのでやっぱり良いです。
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